IR Report
内部統制システムとディスクロージャーポリシーについて
先日、日本IR協議会主催トップセミナーにて、西村ときわ法律事務所のパートナーである武井一浩弁護士から「リスク管理におけるトップの役割―内部統制システム等の法的観点からー」という内容のプレゼンテーションがありました。このお話の内容から、弊社では、ディスクロージャーポリシーは、コンプライアンスの観点からも、企業経営において重要な位置付けにあると再認識いたしました。
当プレゼンテーションは、法的観点からのリスク管理のために、内部統制システムを整備する必要があるという論点で展開されています。企業は、プラス面を伸ばす(企業経営の効率性を向上させる)ことで利益の最大化を目指すと同時に、マイナス面を防ぐこともしなければならない、即ち企業不祥事・事故等に伴う損害の最小化を考えなくてはならない、としています。そのために「リスク管理・内部統制システム」を整備する必要があり、この内容は、取締役会で決議しなければならない(商法260条2項)と述べておられます。この「内部統制システム」とは、次の4つの項目から成り立っています。
(1) コンプライアンス
(2) リスク管理
(3) 財務情報その他の企業開示情報の信頼性確保
(4) 業務・事業経営の効率性
IR担当者にとっては、上記の(3)が最も関心がある項目でありますが、弊社が従来から提案しているディスクロージャーポリシーは、まさに上記の(3)の範疇に入るものであります。法的リスクの回避、あるいは最小化という点においても、ディスクロージャーポリシーは重要な役割を果たしていると言えるのではないでしょうか(なお、武井弁護士は、ディスクロージャーポリシーという言葉は使用なさっておりません)。
欧米企業と違う日本企業のHP上のディスクロージャーポリシー
今では多くの企業が「ディスクロージャーポリシー」をホームページに掲載しています。欧米の企業では、取引所からの要請もあってコーポレート・ガバナンスポリシーは載せておりますが、ディスクロージャーポリシーを載せている企業はまだ少数です。これは、内部統制システムと同様に、ディスクロージャーポリシーは重要な社内体制に関わるものであり、本来外部に公表するべき性質のものではないと考える企業が多いことが背景にあると考えます。
私どもでは、ディスクロージャーポリシーによって、情報開示に関する体制が整備され、IR意識を全社に浸透させることができる一方、そのような社内体制のおかげで積極的な情報開示が可能となり投資家から信頼感を得ることができると、従来から確信しております。さらに、ディスクロージャーポリシーは、社内の情報フローの問題が発生するリスクを極力抑えることができ、その結果、平時においても緊急時においても、対外的に企業の情報発信がスムーズに行うことができ、情報開示に関わる法的リスクも最小限に抑えることができるという面もあるということをご認識いただきたく存じます。このようなリスクマネジメントの観点からも、ディスクロージャーポリシーの構築・見直しをこれまで以上に弊社では強く企業の皆様にはお薦めしたいです。
ところで、昨今企業のホームページに関するIRランキングが、複数機関で実施されています。機関によっては、ディスクロージャーポリシーなるもの*を載せることで、得点が加算されよりよい良いランキング得ることができるところもあります。そのような場合は、社外用(公表用)・社内用に分けて、戦略的にディスクロージャーポリシーを外部にアピールすると良いでしょう。これは次に述べるように、敵対的買収リスクの軽減にも貢献します。
*現在、日本企業のホームページで良く見られる「ディスクロージャーポリシー」は、欧米企業のそれとだいぶ形式・内容がちがっております。「情報開示の基本姿勢」というような表現を用いたほうがよろしいのではないかと考えます。
敵対的企業買収リスクについて
武井弁護士は、さらに、昨今の敵対的企業買収についても解説されております。当然ながら「いくら内部統制をうまくしても、敵対的企業買収リスクはなくならない」ということで、いかに「短期的利益の追求を求めるこれらの人・者」から、企業の長期的利益の追求を守るかが、これからの企業の課題であり、「敵対的買収から無防備な状況であること(For Sale)」自体から脱却しなければならないということでした。
上記でご案内した社外用ディスクロージャーポリシーを作成し公表することで、当該企業が株主・機関投資家を重視しているという姿勢を強調することができ、For Saleの状態ではないということをアピールすることも可能でしょう。
このように、法的リスクと敵対的買収リスクに関わるリスク管理という観点からも、企業のディスクロージャーポリシーの位置付けを改めてお考えになられることをご提案申し上げたく存じます。
<ディスクロージャーポリシーの役割>
内部統制システムの中の重要な項目。企業が敵対的買収から無防備な状況でないことをアピールするもの。
以上
(2004年3月19日)