第7回ICGN年次大会

ICGN(International Corporate Governance Network)の年次大会が、7月11日から13日まで3日間にわたって初めて日本で開催された。本年のテーマは「グローバル・コーポレート・ガバナンス − 神話と現実」である。
ICGNは、1995年3月にCalPERSやTIAA-CREF等の金基金をはじめとした主要な機関投資家が中心となり、コーポレート・ガバナンスに関する意見の交換とガイドライン作りを目指して設立された。過去6回の年次大会は、ワシントン(1995)、ロンドン(1996)、パリ(1997)、サンフランシスコ(1998年)、フランクフルト(1999年)、ニューヨーク(2000年)、と世界の主要な市場で、各国の証券取引所などの主催により開催されてきた。本年の第7回年次大会は、東京証券取引所と日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの主催のもとで東京で行われ、世界20カ国から約450人が出席した。
主要なセッションは以下のとおりであった。


・日本におけるコーポレート・ガバナンスの展望
・コーポレート・ガバナンスにおける政府の役割
・内部からの経営モニタリング
・外部からの経営モニタリング
・アジアにおけるコーポレート・ガバナンス
・証券取引所のコーポレート・ガバナンスへの関わり方
・OECD・世銀によるコーポレート・ガバナンス・プログラムの概要
・インターネットと株主とのコミュニケーション
・悪いコーポレート・ガバナンスがドットコム・バブルをひきおこしたのか?


以上の各セッションでは、国内外の機関投資家・企業経営者・研究者から様々な意見が出され、活発な討論が行われた。日本企業のコーポレート・ガバナンスに関しては、日本企業の経営者が改革に向けた姿勢と日本固有の事情を説明する一方、海外の出席者からは、取締役会の改革などを通して株主重視のコーポレート・ガバナンスをより一層進めるよう促す声が多く、国内外で認識の差が見られた。



以上のセッションの中でも、昨今のITバブルの崩壊とコーポレート・ガバナンスの関係をテーマに論じられた「悪いコーポレート・ガバナンスがドットコム・バブルをひきおこしたのか?」は、日本の現状を考える上でも有益だと思われるので、ここに講演の概要を紹介する。



「悪いコーポレート・ガバナンスがドットコム・バブルをひきおこしたのか?」


Charles Elson デラウエア大学教授


IT企業の取締役会の特徴
新興のIT企業の取締役会に関しては下記の3つの特徴が従来指摘されてきた。


1.独立性に欠ける
2. 少人数である
3. 取締役が当該企業のかなりの部分の株式を保有している


インターネット時代の「ニュースタイル」取締役会
上記の2番と3番に関しては株主の利益にかなうものであり特に問題はない。しかし、1番は、経営陣からの取締役会の独立性を重要視する伝統的なコーポレート・ガバナンスの考え方に反する。IT企業の取締役会には、ベンチャーキャピタリストやコンサルタントが参加しているケースが多く、彼らは経営陣と深くかかわっており、独立性に欠ける。ニューエコノミーがもてはやされた時期(1999年ころ)には、「インターネット時代に突入した現在では、これらVCやコンサルタントなど専門家の知識やガイダンスは、企業の経営にとって非常に重要な役割を果たしており、独立性の欠如による問題を補ってあまりある。」として、このような取締役会のあり方を肯定する意見が見られた。

独立性の重要性
しかし、コーポレート・ガバナンスにおいては独立性の維持が非常に重要である。それはIT時代においても変わらない。上記の取締役らは自身も多くの株式を保有しており、その意味では株主の利益のために働くインセンティブを持っているといえよう。
しかし、株式保有はインセンティブを与えるのみで、取締役に「客観性」(objectivity)を与えることはできない。取締役自身が経営に深く関わっていれば、自分が行ったことを客観的に判断したり、誤りを認めて修正するのは困難である。「客観性」(objectivity)を与えるのは「独立性」である。

ITバブルの崩壊とガバナンスの欠如
米国では、多くのIT企業が現在困難な時期を迎えているが、その理由の一部は彼らのコーポレート・ガバナンスの不備に帰することができるであろう。企業の規模が小さいから、適当な人材を見つけるのが難しいというのは言い訳にならない。上場に備えて外部から取締役を迎え、独立性を確保している企業も多くある。独立性の維持は、今後ともガバナンスにおいて重要な役割を果たすだろう。


(2001/07/16)